最近ふと思い出したことで、あれはいったいどういうことだろうと不満に思うことがあります。高校の世界史の授業での出来事です。
日本の学校に通っていた日本人の方ならたいてい誰しも経験があるかと思いますが、学校の歴史の授業というのは2学期の最後あたりから3学期にかけては非常につまらないというか不愉快な気持ちになることが多いです。
日本人がどこどこに侵略したとか奇襲したとか強姦したとか虐殺したとか、まあそんな話をうんざりするほど延々と聞かされるわけですからたまったものではありません。
私も初めは日本人はアジア諸国にずいぶんと悪いことをしてきたんだなあ、反省しなければいけないなあなどと極めて素直に聞いておりました。
しかし、途中からあまりにも日本が一方的に悪いという事柄ばかりが続くので、だんだん逆に日本がいいことをしたという出来事が先生の口から語られることを心待ちにするようになってきました。
私は一部の公立高校などで行われているという極端な反日教育を受けたことはなかったので、元々日本がいい国であるという認識をずっと持っていました。日本人はみんな温厚だし、そんなに悪いことばかりするはずはないと…。
そもそも物事でどちらかが一方的に正しくて、どちらかが一方的に悪いなどということがそんなに何度も続くということは通常あり得ないわけで、日本人が正しいという歴史もそのうちに出てくるだろうと考えていました。
ところがそんなある日の世界史の授業で、クラスで発言力の強い目立つヤツが突然「先生、どうせそれも日本が悪いんでしょ!」「結局日本が全部悪いってことでしょ!」と怒ったように叫び出したのです。
私はびっくりしつつもその質問に対する先生の回答に期待しました。「そんなことはない!」と当然言ってくれるだろうと。そして日本が正しいことをしたという歴史を語ってくれと…。
しかしその30代半ばの社会科の教師の返答を聞いて、私はあ然としました。 「うーん、まー、そうだねーえ」これが彼の答だったわけです。本当にこれだけでした。なんかもう突き放されたような、とても悲しい気持ちになったのを覚えています。
その後、この生徒は事あるごとにこの言葉を繰り返しました。自分のお祖父さんお祖母さん世代を、無思考無検証でとにかく「悪い」と罵る異常な光景です。そして教師もこれにやんわりと同調するというとんでもない状態が続きました。
高校の歴史の授業は本当につまらなかった。日本人が悪いこと”しか”していないなどという歴史を学んで日本人が楽しいわけがありません。日本人が興味を持つわけがありません。
しかしこれが事実ならしょうがありません。日本人が悪いということがどうにも揺るぎない、確固たるものであるならこれも致し方がないでしょう。
しかし、です。私は予備校に入って日本史の講義を受けておりましたが、ここで語られた歴史は高校時代のものとはまったく異なるものでした。 この予備校講師は保守的な先生だったので、少々右にかたよってる印象があり、言っていることがすべて正しいと鵜呑みにしていたわけではありません。
しかし少なくとも小中高で歴史を学んできている私が、「日本が正しい」とする説を唱える人も存在し、またそういった学説もあるのだということを予備校に入るまで全く聞いたことがなかったということが、そもそもおかしいと思うわけです。
高校の社会科の教師が、「先生、どうせ日本が全部悪いってことでしょ!」とつっこまれたときに、なぜ日本の立場を擁護する説の存在について、一言でいいから触れてくれなかったのか。
歴史はどちら側から見るかで、見え方がまったく異なる。いろんな国、いろんな立場の人々が複雑に絡み合う歴史なのだから、見方は一つではないはずなのです。
当時の(現在も?)高校の歴史教科書の通りに淡々と授業を進めると、どうしても近代以降は日本が悪いという内容一辺倒になってしまうのは無理からぬことだとは思います。
そこにそう書いてあるのだからそれはもう一教師の立場ではどうしようもないわけで、そのことについては異論はないのです。
しかし歴史の先生なら、日本が世界に対して行った素晴らしい出来事や、一般に日本が悪いとされている出来事に相対するする学説の存在などに一言でもよいから触れてほしい。
ましてや「どうせ日本人が全部悪い」などという、生徒の極めて自虐的な発言に対して、なにか具体的な事例を挙げて私たちに語りかける必要があるのではないだろうかなあと…。
いずれにしろあの「日本人が日本人の歩みを大声で罵倒し続ける」などというのは単なるドMそのものであり、それを許した教師や周りにいた我々生徒たちも含めて、今考えるととても恥ずかしいことだなあと思うわけです。